外国人の方の個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)について 行政書士ファイナンシャルプランナーがご案内

行政書士でファイナンシャルプランナーの三浦です。

私は、外国人の方の在留資格(ビザ)を専門とし、同時に日本でのファイナンシャルプランをご案内させていただいております。

こちらの記事では、外国人の方の個人型確定拠出年金(iDeCo)についてご説明しております。

外国人の方の個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)について

厚生労働省ホームページより引用

個人型確定拠出年金(iDeCo)とは、任意加入の年金制度です。

任意加入のため、加入の申込及び掛金の拠出、掛金の運用等、全てのお手続きを加入者様ご自身で行わる必要がございます。

そのため、外国人の方が日本の個人型確定拠出年金(iDeCo)制度を利用されることは、少々ハードルが高いとも考えられます。

しかし、老後の不安が募る現在、老後に向けてコツコツと資産を形成できる個人型確定拠出年金(iDeCo)制度を活用されることは、日本人のみでなく、外国人の方(特に長期滞在されていらっしゃる方)にもメリットが多い制度となっています。

日本の国民年金や厚生年金との組み合わせにより、豊かな老後を望まれる外国人の方及び外国人の扶養者様はご検討の価値があるかと思われます。

外国人の方の個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)のポイント1 (引き出し制限)

原則として、「60歳」までは引き出すことができないため、この点は注意が必要です。毎月決して安くない金額を拠出しながら、60歳までは引き出すことができないため、当面の資金に余裕がない場合には、検討が必要となります。

外国人の方の個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)のポイント2 (月額5,000円から拠出可能)

60歳まで引き出すことができないとなりますと、毎月多くの金額を拠出することに抵抗がある方も多いかと思われます。しかし、個人型確定拠出年金(iDeCo)は、月額5,000円から拠出が可能なので、ご意向に沿った拠出方針を設定することができます。また、拠出金額は、原則として年1回変更することができ、教育や介護資金等の支出が多くなり、支払いが厳しくなった場合には、途中で休止及び再開することが可能ですので、その都度、ご状況に応じて拠出することができます。

外国人の方の個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)のポイント3 (加入期間は、20歳~60歳)

個人型確定拠出年金(iDeCo)は、原則として、国籍を問わず20歳~60歳の方が加入できます。

外国人の方の個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)の拠出(掛け金)について

厚生労働省ホームページより引用

個人型確定拠出年金(iDeCo)は、無制限に拠出できるわけではありません。

上記表の通り、限度額が定められています。

例えば、「永住権」等の在留資格(ビザ)を有して、日本で自営業を行っている外国人の方は、68,000円/月。

「技術・人文知識・国際業務」等の就労ビザを有している場合には(会社員である場合等)、「2. 厚生年金保険の被保険者のうち」のいずれか。

「日本人の配偶者等」などの在留資格を有している場合には(日本人とご結婚をされていらっしゃる方等)、23,000円/月。

が拠出の上限となります。

外国人の方の個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)のメリット 税金対策になる(所得税及び住民税)

個人型確定拠出年金(iDeCo)は、拠出した掛金が全額所得控除になるので、拠出金額が多いほど所得税及び住民税を軽くすることができます。

所得税及び住民税は、ご年収から各種控除等を差し引いた課税所得より、算出いたします。つまり、ご年収が高いほど、所得税及び住民税も高くなるということになります。

個人型確定拠出年金(iDeCo)の拠出金額は、「各種控除等」に含まれるため、税金対策として有効な一つの手段として、活用することができます。

税金対策例

課税所得(年収ー各種控除等を差し引いた金額)が、2,980,000円の場合に所得税及び住民税がそれぞれ10%課税された場合には、596,000円の支払いが必要となります。

しかし、個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入し、毎月12,000円を支払っていたとします。

その場合には、加入していない場合の2,980,000円から144,000円(12,000円×12ヶ月)を差し引くことができます。

つまり、課税所得は、2,836,000円となります。

2,836,000円の場合に所得税及び住民税がそれぞれ10%課税された場合には、567,200円の支払いが必要となります。

ご年収が同じであっても、個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入された場合には、28,800円の減税が行えることになります。

個人型確定拠出年金(iDeCo)は、老後資金を貯められることはもちろん、現在の税金対策にもなるため、加入のメリットは大きいと言えます。

外国人の方の個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)のメリット 受け取り方が選べる

個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)は、年金または一時金として受け取ることができるため、ご自身のライフプランに合わせて受け取り方法を選択することができます。

個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)は、原則として、60歳まで給付を受けることができないため、現役時代は一定の負担がかかるものの、老後の安定を得る一つの方法として検討の価値がございます。

受け取り方法は、下記の3種類となります。

一時金として、一括での受給

個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)は、60歳から受け取ることができますが、70歳まで受け取りを遅らせることができます。

60歳に退職金を受け取り、かつ、再就職される方も多く、60歳の時点において資金に余裕がある方も少なくないかと思われます。

そのため、70歳まで個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)の受け取りを遅らせることにより、老後の資金の安定を図ることができます。

また、個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)を一時金として一括で受け取る場合には、「退職所得控除」が適用され、税負担の軽減がございます(一時金として一括で受け取る場合には、退職所得の課税対象となります)。

有期年金として、分割での受給

年金形式にて、個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)を受給することができます。

運営機関が定める、5年~20年において、分割にて支給されます。

個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)を有期年金として分割で受け取る場合には、「公的年金等控除」が適用され、税負担の軽減がございます(有期年金として分割で受け取る場合には、雑所得の課税対象となります)。

上記2つの受給方法を組み合わせて受給

運営機関によりますが、上記2つの受給方法を組み合わせて受給する方法をとることができる場合もございます。

つまり、一時金として大きく受け取り、残額を分割で受け取る形になります。

以上、3つの方法のいずれかにて受給されることになりますが、一概にどちらの方法が良いかは、個々それぞれのご状況によります。

自営業と公務員の方では、退職金及び公的年金等の取り決めが異なりますし、定年後に働かれるかというご自身のライフプランによっても、受給方法を検討される必要が出てきます。

また、受給された資産をどのように運用されるか、相続について等、60歳〜70歳の方は多くのお金の悩みを抱えてらっしゃるかと思われます。

ご必要に応じまして、行政書士及びファイナンシャルプランナー等にご相談いただけますと幸いでございます。

外国人の方の個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)のポイント

まず、大前提といたしまして、個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)に拠出(支払いが)可能な条件として、日本国内に居住していることが求められています。

つまり、外国人の方は、日本に在留される際には、在留期限が設定されているため(永住者を除く)、個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)に拠出されるに際して、不安定な立場にあるとも考えられます。

仮に、日本を出国されたとしても、拠出されたお金が消えてしまうわけではありませんが、引き続き拠出することができなくなります。

そのため、長期的に日本に滞在される予定がある外国人の方(永住者・日本人及び永住者の配偶者・高度専門職・長期にわたり日本で就労されている方等)でない場合には、個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)への加入の優先順位は低いかと思われます。

下記、外国人の方の個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)加入の際のポイントになります。

外国人の方も、日本人と同様に課税軽減がある

外国人の方が、個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)に加入された場合には、日本人と同様に「拠出金が全額所得控除」「運用益非課税」「受給時に退職所得控除、公的年金等控除」を受けることができます。

「拠出金が全額所得控除」されるため、前述の通り、所得税及び住民税の税金対策となります。

「運用益非課税」なので、拠出金に運用益が発生しても、課税はされません。

また、「受給時に退職所得控除、公的年金等控除」が適用されるため、ご自身のお仕事や資産のご状況に応じて、しかるべきタイミングにて受給することができます。

つまり、長期的に日本に滞在される外国人の方にとっては、日本人と同様に税金対策及び老後の資産形成に有益なシステムとなっています。

しかし、在留期限がある外国人の方にとっては、日本の制度である個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)に加入されることに懸念点があることも確かかと思われます。

しかし、在留資格(ビザ)を更新されることで、長期的に日本に滞在することが可能となるため、過度な心配は不要かと思われます。

この点、法令違反及び在留資格(ビザ)の活動範囲を超えて活動をしていたなど、在留資格更新を不許可とすべき事項がない場合には、在留資格更新が許可される可能性が高くなるためです(但し、申請を行っても100%許可されるわけではございませんので、この点は注意が必要です。)。

特に、日本人または永住者の方とご結婚されており、「日本人の配偶者等」の在留資格を有している外国人の方は、実体を伴った婚姻生活が3年以上継続し、かつ、引き続き1年以上に日本に滞在することで、永住権申請を行うことができます。

つまり、日本人または永住者の方の配偶者様は、ご結婚から数年後には、永住者となれる可能性がありますし(永住者は、無期限で日本に滞在することが許され、在留期限が定められません)、何よりも日本での今後の生活を金銭面から安定的なものとされるために、個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)への加入をご検討いただく価値はあるかと思われます。

外国人配偶者の方の老後を保証する

私は、行政書士として、多くの国際結婚のサポートをさせていただいております。

特に、フィリピンの方とのご結婚手続きを多くサポートさせていただいているのですが、「私が死んだ後、妻は生活していけるのか」というお悩みを抱えていらっしゃる日本人の方が多くおります。

一概には言えませんが、フィリピンの方とご結婚される方は、日本人の方が50歳(男性)、フィリピンの方が30歳(女性)など歳の差があることも珍しくありません。

そのため、平均寿命までご存命と仮定いたしますと、男性の方が先に亡くなってしまうことになる可能性が高くなります。

結婚生活の中で、フィリピン人の奥様が日本語能力及び日本で収入を得られる資格やスキルを取得できれば安心材料のひとつになるかと思われますが、日本人配偶者が亡くなってしまった場合、異国の国で急に一人暮らしとなるため、心配をされる方も少なくありません。

そのため、フィリピン人の奥様は日本人配偶者が亡くなられた場合、母国に帰国されることも多いです。

この点、フィリピン人の奥様が引き続き日本で生活をされるにも、母国で生活をされるにも資力に十分な余裕があるに越したことはありません。

特に、フィリピンに帰国された場合には、個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)の給付のみで老後を暮らすことも可能になるかと思われます(もちろん拠出された合計金額及び運用実績によります)。

フィリピンでは、家族全体で月2~4万円程度で生活されていらっしゃる方も多く、個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)をフィリピン人の奥様に拠出されていることで、フィリピン人の奥様の老後の安心材料の一つになるかと思われます。

しかし、日本人配偶者がフィリピン人の奥様に拠出した拠出金は、「全額所得控除」の対象にはなりません。

そのため、日本人配偶者様の税金対策とはなりませんが、フィリピン人の奥様にとっては、個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)加入のメリットが大きいかと思われます。

帰国されるとiDeCoの被保険者ではなくなる

個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)は、外国人の方も加入することが可能ですが、帰国(日本を出国)されると、継続的な拠出ができなくなります。

個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)は、国民年金に保険料を納めていることが前提となるため、日本を離れ、国民年金の支払い義務がなくなった場合には、個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)への拠出ができなくなります。

帰国される際には、国民年金脱退一時金として、お金を受け取れるケースもございますので、個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)に加入されていらっしゃる方が、日本を離れる場合には、国民年金基金連合会等の関係役所にお問い合わせ頂くことをお勧めいたします。

まとめ

近年、日本は多くの外国人の方を受け入れており、外国人の方が安心して日本での暮らしを送れるような枠組みの規定が急務となっています。

個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)への加入は、日本人も含め任意なので、必須のお手続きではございません。

しかし、人生100年時代と言われ、老後資金の不安が募る現在、個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)は一つの安心材料になり得る存在です。

今後、長期にわたり日本での生活を望まれる外国人の方は、是非、ご検討いただけたらと思います。