協議離婚時に作成する離婚協議書は、全く同じ文書を二部用意(印刷)し、夫婦それぞれの署名捺印を行い、その後は各自一部ずつ保有します。
万が一、離婚成立後に、離婚時の合意事項について不確かな点が見られたり、トラブルが起きた場合には、当時の合意事項について離婚協議書を確認し、対処をすることになります。
離婚協議書の署名捺印について
離婚条件を明記し、相互の意思確認を図るための文書を離婚協議書と呼びます。
離婚慰謝料や財産分与、親権者の決定、養育費の支払い、面会交流の規定、また誓約事項などが離婚条件として挙げられます。
離婚協議書は、離婚条件を明記した契約書という性格上、離婚が成立した段階で効力を生じます。
離婚協議書を交わしますと、そこに記載された合意事項を、離婚後に履行することが当事者双方に求められます。
離婚協議書の締結は、夫と妻それぞれの住所を記入し、署名捺印を行います。
署名は必ず手書きで行う必要がありますのでご留意ください。
捺印に使用する印鑑は、実印で行うことは必須ではありませんので、認印を利用することも可能です。
ただし、ゴム印ですと変形する場合があり、信頼性の点で劣りますので、使用を避けることをお勧めいたします。
署名の氏について
離婚協議書の署名についてご質問が多い点としましては、「離婚によって氏が変更するのですが、どちらの氏を署名時に使用するのか」というものです。
離婚協議書の署名は、戸籍上の氏名を使用する必要があります。
つまり、離婚届を出すタイミングと離婚協議書の締結のタイミングに併せて、署名の氏をご判断いただくということになります。
そのため、結婚により氏が変更されることが多い女性は、特に注意が必要になります。
離婚協議書に立会人は必要?
民法では、離婚協議書作成に関して、立会人についての定めはありません。つまり法律上は、必要ではないことになります。
もちろん、ご状況に応じて、立会人の署名捺印を付け加える場合もあります。
この立会人ですが、法律的な定めがありませんので、どのような立場の方でも立会人になることが可能です。
しかし、夫婦双方の真意を見届ける性質上、十分な見識を有している第三者が望ましいといえます。
離婚協議書が複数枚になっても大丈夫?
離婚条件は、話し合う項目も多岐に渡りますので、離婚協議書が2枚以上と複数枚にわたる場合が大半です。
このような場合には、契印が必要になります。
ページとページの継ぎ目をピタリと合わせ、2ページにわたって印影をまたがせるように押印することを契印と呼び、この契印によってそのページが一対だと証明します。
契印を行うことで、複数枚にわたる契約書が一体であると確認できると同時に、離婚協議書の改ざんを防ぐことができます。
この契印がない場合には、署名と押印のないページを、全く違う内容に後日差し替えることが可能となってしまいます。
細かなことですが、離婚協議書作成時には注意を払う必要があります。
離婚協議書は届出が必要?
締結が完了した離婚協議書の保管先ですが、離婚協議書は本来は夫婦で取り決めた合意事項の契約書ですから、役所などへ提出する必要性も義務も存在しません。
しかし、確認資料の一つとして、公的給付を受ける場合に写しを提出する場合や住宅ローン契約を変更する手続きとして、金融機関に原本の提示を求められる場合はあります。
離婚協議書は、夫婦間の合意事項を明文化したものですので、もともと第三者への開示を前提としていません。
離婚後に離婚協議書の合意事項が守られていれば、離婚協議書は保管されたままで使用の機会はありません。
つまり、使用する機会がない方が、双方にとっては望ましいと言えます。
離婚協議書を紛失したら?
離婚後に誤って離婚協議書を紛失した場合には、相手方に通知され、相手方合意の上、コピーを作成されることをお勧めいたします。
または、改めて、離婚協議書を作成することも可能です。
この点、紛失というトラブルを防止されるために、離婚協議書作成の時点にて公証役場にて、公正証書を作成されておくことをお勧めいたします。
離婚協議書を公正証書にされることで、公証役場に離婚協議書のデータが残ることになり、当事者様での「紛失」というトラブルは回避することができるためです。
まとめ
当事者双方で合意に至った内容を、離婚協議書に記載することになります。
そのため、状況に応じて、記載する内容が異なりますし、法に違反する内容を誤って記載してしまうと、離婚協議書自体が無効になるというリスクもあります。
そのため、トラブルを未然に防ぐためにも、離婚協議書を作成される際には、行政書士や弁護士にご相談されることをご検討いただけたらと思います。
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