離婚の訴訟を起こすことができる原因を、民法770条で5つ確認できます。
その内の第一番目、民法770条1項1号「配偶者に不貞な行為があったとき」 とあることから、不貞行為は離婚訴訟の原因に値するとされ、民法上の不法行為とみなされています。
不貞行為とは判例や通俗的にみて、不倫や浮気を指す言葉とされ、そのため不倫や浮気は不法行為と言えるのです。
民法上の不法行為による被害に対して、民法724条は、被害者に損害賠償権を与えています。
損害賠償を請求するために裁判をおこす方法もありますが、不倫をされた被害者感情として、速やかな解決を願う場合もあるでしょう。
速やかな解決を願う場合には、裁判を選択せずに当事者間、あるいは行政書士、弁護士が間に入って話し合う「示談」を行います。
不倫の示談では、慰謝料の額や不倫再発防止に向けた取り決めがなされます。
そうした取り決めを記録したものを一般的に「示談書」と呼びます。
「示談書」という呼び方自体に抵抗感が強い場合には、「合意書」「和解書」といった呼び方でも問題はありません。呼び方の違いによる法的な影響はありません。
不倫の示談書を作成するメリット
口頭でも示談は成立します。
では、口頭でも成立する示談を書類に残すメリットはなんでしょう。
それは書面に残しておくことで、示談の証明力を強め、示談後のトラブルを防ぐためです。
不倫被害者にとっては、正当な慰謝料請求だと証明できると同時に、不倫加害者の慰謝料支払いの金額や支払いの期日を明確にすることで支払われないリスクを回避できます。
また、不倫加害者にとっても、示談後に不倫被害者からさらに慰謝料を請求される事態を防ぐことができます。
そして重要なことは、当事者たちの不倫の再発防止に効力を発揮する、という点です。
また、後にこの不倫が契機となって離婚訴訟が起きた場合や、再び不倫関係を繰り返した際に、慰謝料の増額請求を行う有力な証拠となります。
不倫の示談書を作成する際の注意点
昨今ではインターネット上に示談書のテンプレートがたくさん紹介されており、簡単に作成できるかのような印象を与えています。
ただし、ご自身で作成する場合に注意すべき点がいくつかあります。
①示談書作成は、個々のケースによってオーダーメイドが必要。
不倫にはさまざまなケースがあります。
配偶者の不倫相手に、配偶者が既婚者であるという事実が伝わっておらず、不倫相手に不倫という認識がなかった場合、また不倫相手にも配偶者がいた場合等によって、示談書に盛り込む内容を変える必要があります。
また、慰謝料の金額についても、注意深く記載する必要があります。
②公序良俗や一般常識をよく考慮する。
公序良俗に反する事項を目的とする法律行為は民法上無効とされます。
慰謝料として非常識な高い額を要求したり、相手の人権を侵害するような内容を記載しますと、公序良俗に反するものとみなされ、たとえ当事者同士の合意があっても無効とされる可能性があります。
③過不足のない、論理的に矛盾や破綻のない内容を記載する
不倫の示談書を作成する目的は、不倫問題の早期解決を目指し、また再発の防止策を記載し、示談後の思いがけないトラブルを回避することです。
そのために、正確性を心がけ、内容を過不足なく記載し、論理性が欠如しているなど、あいまいさを排除する必要があります。
不倫の示談書を行政書士に依頼するメリット
行政書士にご依頼いただく最大のメリットは、個々のケースに対応したオーダーメイドの示談書を作成することができる点にあります。
法律の専門知識を理解していない状態で、示談書を作成することは、簡単なことではありません。
実際に、一般の方が専門家のアドバイスを仰がずに示談書を作った場合、内容に不十分な点がみられ、結果として、法的に効力がない示談書になることがしばしば起きています。
ぜひ行政書士・弁護士といった専門家へ依頼され、合意の内容を注意深く具体的に含めた示談書を作成されることをお勧めします。
しかし、弁護士は行政書士に比べて高額な報酬を請求される可能性がありますので、注意が必要です(行政書士が作成しても、弁護士が作成しても示談書の効力に相違はございません)。
まとめ
不倫の示談交渉が成立したら、個々のケースにあった示談書を作成することが必要不可欠です。
示談書を配偶者の不倫相手と取り交わす場合、不倫の事実内容、不倫相手からの謝罪、慰謝料に関する取り決めなど、個々のケースに応じて記載する内容は詳細かつ多岐に渡ります。
論理的な矛盾や破綻がなく過不足のない文書を目指すこと、相手の人権を傷つけない内容であること。そうでなければ結果として法的に無効な示談書となってしまいます。
そのため、法律家でなくては、自力で作成するにはかなりのハードルがあると言わざるをえません。
今後のトラブルを未然に防ぐためにも、ご状況の終結を図るためにも、行政書士や弁護士に示談書の作成をご依頼いただくことをご検討いただけますと幸いでございます。
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