民法上、不倫(不貞行為)はどのように捉えられているのでしょうか?
まず不倫という言葉は、通俗的に使用されており、法律用語ではありません。
一方で不貞行為という言葉は、民法770条で確認できます。「第770条第1項 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。 第1号 配偶者に不貞な行為があったとき。(以下略)」とあり、離婚の正当な理由として法的に認められています。
この民法770条が根拠となり、不倫(不貞行為)は違法行為であるとみなされるのです。
また民法719条(共同不法行為の責任) によって、既婚者と不貞行為をおこなった場合、 不倫に関わる2人の不貞行為はもう一方の配偶者に対して共同不法行為とみなされます。
民法709条及び710条をもとに、不倫の被害者側は、自身が受けた精神的苦痛について慰謝料を請求することができます。
また不倫の被害者側は、今後も婚姻生活を継続していく意思があれば、不倫配偶者及び不倫相手には、不倫関係の解消を明確にしてもらう必要があります。
不倫が発覚した場合に、そのまま放置するのではなく、事案に合った示談書や誓約書等の書面をかわすことで、お互いの心の平安につながりますし、夫婦関係を再構築しやすくなります。
不倫の事実が発覚し、相手の名前も連絡先も把握していながら放置しておくと、時効によって不倫で被った精神的苦痛に対する慰謝料請求の機会を逸します。
不法行為による損害賠償の請求権は「損害及び加害者を知った時から3年有効」と民法724条により、確認できます。
不倫の示談書または誓約書を作るケース
不倫(不貞行為)という関係を解消し、再発を防止する為に、きちんと書面を作成し、当事者同士で署名及び捺印をかわす方法として
1、不倫相手との示談書または誓約書
2、夫婦間での誓約書
の2つの方法があります。
夫婦間だけの誓約書を作成するか、あるいは不倫の当事者である相手方とも誓約書をかわすか、当事者の置かれた状況やご希望により様々です。
相手方との示談書(誓約書)の作成にあたっては、不貞行為の詳細を慎重に検討して、記載する必要があります。
相手方が独身か、既婚者か、内縁の相手がいるのかどうか、学生時代の友人だったのか、会社の同僚か、店にきた客と従業員として知り合ったのか、などの細かい背景についても記載する場合もあります。
不倫の慰謝料について
慰謝料請求の法的根拠といえるのは民法709条及び710条です。民法710条では、709条の規定を用いて生命、身体、自由、名誉、などの権利を侵害された場合にも、損害賠償を請求できるとしています。
そして710条の財産以外の損害賠償=精神的な苦痛を通俗的に慰謝料と呼んでいます。
夫(妻)や浮気相手に慰謝料を請求することは、このように法律で認められていますが、慰謝料の金額自体には明確な基準がないのが現状です。つまりケースバイケースで決まるとご理解ください。裁判では過去の判例に則って金額が決められます。
参考までに裁判所の「慰謝料の目安」をお伝えします。
①離婚も別居せず,夫婦関係を継続する場合
50万円~100万円
②浮気が原因で別居に至った場合
100万円~200万円
③浮気が原因で離婚に至った場合
200万円~300万円
浮気・不倫による損害が大きいほど慰謝料も高くなる傾向を読み取ることができます。
一方で、裁判を回避し、当事者同士の話し合いで決着を目指す場合には、上記のような慰謝料額にならない場合があります。
当事者同士の話し合いで決着を目指す場合には、問題の早期解決や精神的苦痛などを一番に考慮して金額が決まる場合がほとんどです。
離婚が決まっていないにも関わらず,離婚した場合と同様の慰謝料で和解し、速やかな決着を図ることも多いのです。
余談ですが、芸能人の高額な離婚慰謝料がテレビで話題になることがありますよね。これは財産分与を含んでおり、慰謝料という範疇を超えています。
芸能人としての収入が莫大なものであっても、裁判で慰謝料の金額を争った場合には,判決で億単位の支払いを命じられる、ことはまず考えられません。
裁判では、先にお話ししました「慰謝料の目安」を基準としているからです。
不倫問題で誓約書を作成するメリット
不倫(不貞行為)が発覚し、当事者同士の話し合いで決着を目指す場合には慰謝料の支払い条件などを定める「誓約書」(合意書)を作成します。
不倫(不貞行為)で家庭の平穏を壊した相手の顔なんて見たくない、話もしたくない、とためらう方もいらっしゃるでしょう。
もう一度結婚生活を立て直すために、また、不倫を清算し、再発を防止するための解決策として、最低限の協議は欠かせないもの、との理解で一歩踏み出されることをお勧めします。
弁護士に対応を依頼すれば、相手方と直接会うことや話す必要がなくなるので精神的に楽、と思う方もいらっしゃるでしょう。
しかしながら、現実的には、支払い報酬の負担をできるだけ軽くしたい、まずは自分でもできる範囲のことを実行しながら解決を目指すという手法を選択する方が増えています。
協議を行う方法として、面会が辛い場合には、電話あるいはメールといった手段から解決を目指してみてはいかがでしょうか。
最終的に、当事者間で協議がととのいましたら、「誓約書」(合意書)をかわし、解決を確認します。
不倫(不貞行為)の解決を目指して「誓約書」(合意書)をかわすメリットは以下の通りです。
・不倫の慰謝料額は小さくありません。慰謝料を受けとる側は、誓約書の中で、不倫の事実も確認でき、正当な権利行使による金銭授受であり、恐喝行為だと言われる恐れが無くなります。
・慰謝料を支払う側は、慰謝料の支払いによって、不倫問題が解決したことを誓約書の中で確認できます。慰謝料を追加請求される事態を防ぐことができます。
・不倫の事実を第三者に口外しない守秘義務をお互いに課すことができます。不倫発覚後も婚姻を継続したり、同じ職場で勤務を続けることもありますので、守秘義務は重要です。
・不倫の再発を防止するため、万が一接触、性交渉が起きた場合のペナルティーを損害賠償額の予定として 誓約書(示談書)の中で設定できます。
・不倫問題が元で最終的に離婚に至った場合、不倫配偶者に対して有責配偶者としての離婚慰謝料を請求するため、誓約書(示談書)を証拠資料として利用できます。
まとめ
不倫が発覚しても、話し合いをしたくないが為に、うやむやにすることを選択する方もいらっしゃいます。
誓約書は、今後のご夫婦の関係性を再構築し、将来にわたって円滑に継続していく為に必要不可欠なものです。
ご自身の精神的苦痛のみならず、金銭面での損失が起きませんように、誓約書の作成をぜひご検討ください。
コメントを残す