


1. 時間単位年休とは?
まず前提として、年次有給休暇(有給)は、法律上「1日単位」で取得するのが原則です。
これに対し、時間単位年休は、文字通り1時間単位で有給を取得できる制度です。
例えば、「通院のために午前中に2時間だけ休む」「子供の送迎のために1時間早く退勤する」「役所の手続きのために中抜けする」といった、柔軟な働き方を可能にするための仕組みです。
2. 「年5日」が上限
タイトルの核心部分である「年5日」が上限、についてです。
これは「1年間に5回までしか使えない」という意味ではありません。
正しくは、「1年間に時間単位で取得できる有給休暇の合計時間数は、5日分が上限」という意味です。
- ポイント:
- 例えば、1日の所定労働時間が8時間の会社の場合、年間の時間単位年休の上限は 5日×8時間=40時間 となります。
- この「40時間」の枠内であれば、1時間単位で何回取得しても構いません(例:1時間を40回、2時間を20回など)。
- もし1日の所定労働時間が7時間30分の会社なら、5日×7.5時間=37.5時間 が上限となります。
この「5日」という枠は、前年度からの繰り越し分も含めた、その年度に労働者が保有するすべての有給休暇のうちの5日分、ということです。
3. 導入ルール(会社が導入する条件)
この制度は、法律で自動的にすべての会社に認められているものではなく、導入するためには厳格なルールがあります。
時間単位年休は、会社が以下の2つの手続きを両方とも行って初めて導入できます。
- 労使協定の締結 労働者の過半数を代表する者(労働組合など)との間で、書面による協定(労使協定)を結ぶ必要があります。 この協定で「時間単位年休の対象者」「1日分の時間数」「1時間以外の単位(例:2時間単位)にするか」などを定めます。
- 就業規則への記載 労使協定を結ぶだけでなく、会社のルールブックである「就業規則」にも、時間単位年休の制度について明記する必要があります。
【重要】 逆に言えば、この2つの手続きが完了していなければ、労働者が「1時間だけ休みたい」と希望しても、会社はそれを認める義務はありません(もちろん、会社が独自に「中抜け」などを認めるのは自由です)。
4. 社労士からの補足:重要な注意点
実務上、特に注意すべき点を2つ補足します。
① 年5日の「取得義務」にはカウントされない
2019年から、会社は有給休暇が10日以上付与される労働者に対し、「年5日」の有給休暇を必ず取得させることが義務化されました。
ここで注意が必要なのは、時間単位年休で取得した時間数は、この「年5日の取得義務」の消化日数としてカウントできないという点です。
(例:1日も休まず、1時間単位の有休休暇を合計40時間(=5日分)取ったとしても、法律違反となります。必ず「1日単位」または「半日単位」で別に5日間取得させる必要があります。)
② 前年度の「枠」は繰り越せない
有給休暇の「日数」は、使い残せば翌年に繰り越しできます(時効2年)。 しかし、時間単位年休の「年5日分」という「枠」は繰り越しできません。
- 正しい例 前年度から10日繰り越し、今年度12日付与された(合計22日保有)。 → この22日のうち、今年度の枠である「5日分」を時間単位で使える。
- 誤った例 前年度、時間単位の枠を3日分しか使わなかったので、残りの2日分を今年度に繰り越し、今年は「5日+2日=7日分」を時間単位で使える。 → これは間違いです。枠は毎年5日が上限です。
まとめ
- 時間単位年休は、導入すれば柔軟な働き方ができる便利な制度です。
- ただし、導入には「労使協定」と「就業規則」が必須です。
- 取得できる上限は「年5日分」の合計時間数です。
- 義務化された「年5日取得」にはカウントされないため、管理者は注意が必要です。
『平日の役所手続き』や『通院』、あるいは『お子さんの学校行事』などで1日休みを取るのは、調整が大変なこともありますよね。
そんな時こそ、この『時間単位年休』の出番です。
もし職場のルールブック(就業規則)を見てこの制度があったら、それは病院が『柔軟に働いてほしい』と考えているサインです。
遠慮なく活用して、仕事と私生活の両立に役立ててくださいね。













