

1. 賃金全額払いの原則と1分単位の計算
- 賃金全額払いの原則: 労働基準法第24条には「賃金は、通貨で、全額を支払わなければならない」という賃金全額払いの原則があります。この原則から、会社が給与(賃金)から控除できるのは、労働者が実際に働かなかった時間分(ノーワーク・ノーペイ)だけです。
- 1分単位の計算: 5分の遅刻であれば、給与から控除できるのは5分に相当する賃金のみです。労働していない5分を超えて、働いた時間(25分)に対する賃金までカットすることは、原則として違法な控除となります。
2. 適法な端数処理との違い
労働基準法の行政解釈(通達)では、事務処理の簡便化の観点から、以下の端数処理を認めています。
- 1か月の労働時間集計時の端数処理(特例) 「1か月における時間外労働、休日労働及び深夜業の各々の時間の合計に、1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること」は適法です。
- 賃金計算における端数処理 1時間あたりの賃金額や、1か月の賃金総額に1円未満の端数が生じた場合、「50銭未満を切り捨て、50銭以上を1円に切り上げる」といった処理は適法です。
【重要】「都度の控除」に関する誤解への注意
看護師社労士
適法な端数処理はあくまで「1か月の合計時間」や「賃金総額」に対する特例であり、日々の遅刻時間を実際よりも長くみなして賃金をカットすることは、労働基準法第24条(賃金全額払いの原則)に違反します。
3. 「減給の制裁」との厳格な区別
- 「減給の制裁」の目的: 「減給の制裁」とは、規律違反に対する懲罰(ペナルティ)として行うものであり、労働基準法第91条に基づき、1回の事案につき1日の平均賃金の半額まで、1か月の合計が1か月の賃金の10分の1までという上限があります。
- 違法の可能性: 会社がこの規定を「減給の制裁」として利用したとしても、5分の軽微な違反に対して30分分の賃金をカットするという行為は、そのペナルティの程度が社会通念上不合理であり、権利の濫用として違法と判断される可能性があります。
結論
5分の遅刻をその都度30分の遅刻として賃金控除することは、賃金全額払いの原則に反するため、原則として違法です。
就業規則に同様の規定があったとしても、労働基準法に反するため無効となる可能性が高いです。
会社は従業員に対し、頻繁な遅刻等に対して別途「減給の制裁」を科すことはできますが、「1回の額が平均賃金の半額を超えてはならない」等の法律による上限(労働基準法第91条) があるため、働いた分の賃金を恣意的にカットすることはできません。
患者さんのために1分1秒を大切に働く皆さんだからこそ、その『働いた時間』もまた、1分単位で大切にされるべきです。
看護師社労士
『遅刻はいけないこと』ですが、それ以上に『働いた分が支払われないこと』もあってはならないことです。
お互いがルールを守り、気持ちよく働ける職場こそが、良い看護につながりますね。














