【社労士が解説】看護師の休憩中、患者対応・外出禁止は違法?「休憩時間の自由利用の原則」

友人の働くクリニックは昼食をファミレスなどで食べる。うちの総合病院は食堂や休憩室で食べている。 2コマ目:クリニックは休憩時間を完全休診にし電話も取らない状況がある。病院は24時間稼働していることとの違いがある。
昼休みも患者の急変があるため外出はしないで、としている病院もあるが、本来は休憩時間を自由に利用させなければならないという規定があり、難しいところ。 2コマ目:クリニックは休憩時間に対応することがないため外出している看護師も多い。
休憩中に患者のことで職場に戻ることをお願いされれば労働時間になるが、病院からの直接的な指示ではなく、受け持ち看護師の裁量や責任感での対応とし、休憩時間としているケースがあるのではないか。 2コマ目:休憩時間は自由に利用させることが前提。ナースコールと連動しているPHSを置いて休憩に行くのもそのため。 結論:規定では、休憩時間は自由に利用できる。

Instagramより引用

1. 法律の大原則:「休憩時間の自由利用」(労働基準法 第34条)

労働基準法では、休憩時間について以下のように定めています。

労働基準法 第34条 第3項 使用者は、休憩時間を自由に利用させなければならない。

これが「休憩時間自由利用の原則」です。

「自由に利用」とは、労働者が使用者の指揮命令から完全に解放され、何をしても(公序良俗に反しない限り)許される時間を意味します。

2. 「休憩時間」と「手待時間(待機時間)」の決定的な違い

まずはこの2つを明確に区別する必要があります。

  • 休憩時間
    • 労働者が指揮命令から完全に解放されている時間。
    • 労働時間ではありません。
    • したがって、お給料(賃金)は発生しません。
    • 例:院外にランチに行っても、休憩室で寝ていても、誰からも指示を受けない状態
  • 手待時間(てまちじかん)
    • 実際に作業はしていないが、何かあればすぐに対応できるよう待機している時間。
    • これは「休憩」ではなく、「労働時間」です。
    • したがって、お給料(賃金)が発生します。
    • 例:ナースステーションでの待機など、すぐに対応できるようにしている状態

3. 「外出禁止」が意味するもの

「休憩時間に外出してはいけない」というルールが、もし「緊急時に対応するため」の措置であるならば、その時間は「休憩時間」ではなく「手待時間(労働時間)」です。

したがって、病院の対応は以下のどちらかでなければなりません。

  • 「休憩時間」として扱う場合
    • 「自由利用の原則」に基づき、院外への外出を認めなければなりません。
  • 「労働時間(手待時間)」として扱う場合
    • 院内に待機させ、緊急時に備えさせることは合法です。
    • ただし、それは「労働時間」であるため、その時間分の賃金(お給料)を支払う義務があります。
    • さらに、その「手待時間」とは別に、法律で定められた「休憩時間」(労働が6時間超で45分、8時間超で60分)を別途、自由に与えなければなりません。
  • クリニックが外出できる理由
    • 小規模なクリニックは、お昼休みを「完全休診」にできます。
    • 医師も看護師も全員が業務から完全に解放され、電話番なども必要ない状態です。
    • したがって、法律(労基法34条)通り、何の問題もなく「休憩時間」として自由に外出ができます。
  • 総合病院が外出できない理由
    • 総合病院は24時間365日動いており、昼休み中も患者の急変や緊急入院、緊急手術の可能性があります。
    • 病院側が「外出禁止」にしている理由は、「万が一の時に、すぐに業務に戻って対応してほしい」、緊急時に「人員が足りない」などの理由があります。

4.外出を許可制にすることについて

休憩時間の利用については事業場の規律保持上、制限を加えることは、休憩の目的を損なわなければ差し支えない、という通達(お知らせ)がありますが、この場合の「規律保持のための制限」と、「緊急対応のための待機」は、法律上、別物です。

「規律保持」とは、簡単に言えば「集団の秩序やルールを守り、保つこと」です。職場(病院など)の文脈で使われる場合は、「職場内の風紀や秩序を維持すること」を指します。

会社(病院)は、多くの人が共同で働く場所です。そのため、全員が気持ちよく、安全に働くための最低限のルール(秩序)を保つ必要があります。

例えば、以下のようなものが「規律保持」のための制限とみなされることがあります。

  • 政治活動や宗教活動の禁止: 休憩中に、他の従業員に対して執拗な勧誘活動などを行うことを禁止する。
  • 飲酒の禁止: 休憩時間中であっても、その後の業務に支障が出るような飲酒を禁止する。(特に看護師など命に関わる業務の場合)
  • 職場風紀を乱す行為の禁止: 大音量で音楽をかける、他のスタッフの業務を妨害するなど。

休憩時間は、勤務の間でその後の労働に備えて休養している時間で、使用者の拘束下に置かれており、一定の制約を受ける場合があります。

例えば、その後の勤務ができなくなるような行為や、他の労働者に迷惑をかける行為などがそれにあたります。

そのため、休憩時間中の外出許可制についても、「事業場内において自由に休憩し得る場合には必ずしも違法にはならない。」とされています。

5. 最も難しい問題:「本人の任意」で対応してしまう実態

ここが看護師の現場で最も根深く、難しい問題です。

「休憩中にPHSが鳴った」「患者さんにナースコールで呼ばれた」……法律上は対応しなくてよいと分かっていても、職業倫理や責任感から「任意で」対応してしまうケースです。

法律上の解釈:「黙示(もくじ)の指揮命令」

たとえ病院側が「休憩中は対応しなくていいよ」と口頭で言っていたとしても、以下のような実態があれば、それは「任意」とはみなされません。

  • 休憩中に対応しないと、明らかに業務が回らない人員配置になっている。
  • 休憩中に対応しない看護師が、上司や同僚から(暗に)非難される雰囲気がある。
  • 病院側が、看護師が休憩中に対応している事実を知りながら、それを放置(黙認)している。

「任意」という名の「自主的なサービス残業」が常態化している場合、それは本人の意思ではなく、そうせざるを得ない状況に置いた病院側の安全配慮義務違反や、未払い賃金の問題となります。

6. まとめ

看護師の皆様の「患者さんを思う気持ち」や「責任感」は非常に尊いものです。しかし、その善意に依存した体制は、法的には許されません。

  • 「外出禁止」は原則違法。
  • 「休憩中の患者対応」も本来は行わなくてよい。
  • たとえ「任意」であっても、それが常態化・黙認されていれば「労働時間」であり、賃金と別途休憩が必要です。

本来は、病院(使用者)が「休憩時間は一切対応しなくて済む」ように、人員配置を工夫したり、休憩時間専用の対応者(フリー業務の看護師など)を配置したりする「体制」を整える義務があります。 



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