


1. 会社が「勝手に」有給を指定することは違法か?
原則:労働者の「時季指定権」の侵害
年次有給休暇は、労働基準法で定められた労働者の権利であり、労働者は原則として自分の希望する時季(日付)に有給休暇を取得できます(時季指定権)。
会社が労働者の意思に反して一方的に取得日を定める行為は、この時季指定権を侵害するものであり、労働基準法違反となる可能性があります。
例外:合法的に会社が指定できるケース
会社が有給休暇の取得日を定めることが許されるのは、以下の二つの法的根拠に基づく場合に限られます。
(1) 使用者による年5日の時季指定義務(2019年改正)
- 目的: 年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対し、確実な取得を促すため、年5日については会社が時季を指定して与える義務があります。
- 手続き: 会社がこの指定を行う場合、必ず労働者本人の意見を聴取し、その意見を尊重しなければなりません。
- 結論: 意見を聞かずに勝手に指定した場合は、この手続き義務に違反します。
◎法律では、会社が「絶対に5日は休ませなさい」と命令しなければならない対象者は、「その年に、新しく10日以上の有給休暇をもらった人」としています。
つまり、「10日」というラインを超えた人だけが、この義務の対象になります。
ただし、繰り越し分は含みません。
前年から繰り越した日数を合算し、お手持ちの有給休暇が合計で10日以上(例:繰越5日+新規5日=合計10日など)となった場合でも、その年に新規付与された日数が10日未満であれば、「使用者による年5日の時季指定義務」の対象とはなりません。
(2) 計画的付与制度の導入
計画的付与制度とは、一言で言うと、「有給休暇のうち何日かを、会社と従業員代表が話し合って『この日はみんなで休みましょう』とあらかじめ決めてしまう制度」のことです。
「お盆休み」や「年末年始」に従業員全員で有給休暇を使って、大型連休にする、などの場合で工場などでよく見られます。
- 目的: 労使の合意に基づき、有給休暇を計画的に取得させることで、取得率の向上と業務調整を容易にするため。
- 手続き: 労使協定(労働者の過半数代表者との書面による協定)を締結していることが必須です。
- 対象: 5日を超える部分の有給休暇についてのみ、会社が取得日を指定できます。
(「あなたが自由に使える有給休暇を、最低『5日』は手元に残さなければならない」、という意味です。)
労使協定がなければ制度自体が導入できず、勝手に指定することはできません。協定があっても、5日分は労働者の自由な取得のために残す必要があります。
結論として、上記の法的根拠と必要な手続きを踏まずに、師長や上司が勝手にシフト表に有給休暇を書き込む行為は、時季指定権の侵害として違法と判断されます。
2. 違法性の高い「勝手な指定」の例
- 理由不明の指定: 「月末で帳尻を合わせたいから」などといった、法的な根拠のない理由で一方的に指定する。
- 意見聴取の無視: 法定の年5日の指定をする際に、労働者の希望を全く聞かず、一方的に通知するだけ。
- 罰則としての利用: 遅刻や欠勤に対する罰則として、一方的に有給休暇を充当する。
3. 「勝手に使われた」場合の対処法
有給休暇は「申請」して初めて成立します。一方的に指定されたものに対し、黙っていると「合意した」とみなされる恐れがあります。
① 会社の意図・事実の確認と証拠の確保
- 事実の確認:就業規則を確認し、「計画的付与」の規定があるかチェックします。
- 意図の確認: 上司や師長に対し、「これは(法定の)年5日の時季指定ですか?それとも(労使協定に基づく)計画的付与ですか?」と法的根拠を尋ね、記録に残します。
- 証拠の確保: シフト表やメールなど、会社が一方的に有給指定を行った記録を保存します。
「いつ」「誰に」「どのような理由で」有給を指定されたかメモに残します。
② 会社への是正要求
- 会社が勝手に指定した行為は違法である旨を伝え、その日の有給休暇の指定を撤回し、自由な時季指定を認めるように要求します。
- 上司への伝え方(例):「この日の有給休暇は私が申請したものではありません。有給休暇は自分の希望する時期に使いたいので、取り消してください。」
③ 上司・担当部署・外部機関への相談
まずは上司や人事課・労務課などに相談してみましょう。
会社との交渉で解決しない場合は、専門機関に相談することも可能です。
- 労働基準監督署: 労働基準法違反の事実を申告し、会社への行政指導や是正勧告を求めます。
- 総合労働相談コーナー: 労働局で無料の相談に応じてもらえます。
シフトに有給休暇が組み込まれているのは、「体を休めてほしい」という上司からの無言のメッセージかもしれません。
もちろん法律(年5日の取得義務)を遵守する側面もありますが、それ以上に、看護師の皆様がゆっくり休めるように、という上司なりの気遣いとも受け取れます。
「休める環境を作ってくれている」と考えると、実はスタッフを大切に思ってくれている病院なのかもしれません。
まずは有給休暇の指定について、上司に相談することから始めてみて下さい。












