【社労士が解説】「許可ない残業」「仕事が遅い」はNG?看護師の残業申請ルールと残業代の境界

悩む看護師のイラストと、「残業って、いつも勝手にしてる気がするんだけど、師長さんとか主任さんの許可って必要なのかな・・・?」という問いかけ。それに対し、社労士のキャラクターが「本来は許可が必要だが、忙しくて余裕がなかったり、上司が黙認している場合は『黙示の指示』とみなされ、残業代をもらう権利が発生する」と解説しているイラスト。
看護師が「仕事が遅いから残業代を払われないことってあるかな?」と質問。社労士が「それはよくある心配だけど、基本的に間違い。一生懸命やっていて時間がかかっているなら、それは病院の指揮命令下にある『労働時間』だから、残業代は発生するのが原則」と回答しているイラスト。
社労士のキャラクターが解説しているスライド。「むしろ、もし業務に慣れていなくて時間がかかってしまうなら、それは個人の問題だけじゃなく、病院側の教育体制や業務配分の問題でもある」とアドバイス。黄色い吹き出しで「結論:残業命令や黙示の指示があれば残業代は支払われる」と強調されている。

Instagramより引用

1. 「許可のない残業」は残業代がもらえない?

原則として、残業(時間外労働)は上司(師長や主任)の「業務命令」によって発生します。

そのため、病院側は「許可のない残業は認めない」というルール(申請ルール)を設けること自体は問題ありません。

ただし、現場では「許可」がなくても、実質的に残業せざるを得ない状況があります。

ポイント:「黙示の指示(もくしのしじ)」

法律上、残業命令は「30分残業してください」という明確な言葉(明示の指示)がなくても成立します。

以下のようなケースは、上司が直接「残業して」と言わなくても「黙示の指示」があったと見なされ、残業代の支払い義務が発生します。

  • 業務量が明らかに多い
    • 定時内に到底終わらない量の業務(記録、翌日の準備、委員会資料作成など)を割り当てられている場合。
  • 緊急対応
    • ナースコールや急変対応、緊急入院などで定時を過ぎてしまった場合。
  • 黙認
    • 師長や主任が、部下が定時後も残って記録などをしているのを知っていながら、特に注意もせず(帰宅させず)放置している場合。

病院が「許可がない」ことを理由に残業代を支払わなくてもよいのは、「やる必要のない仕事を勝手にやっていた」場合に限られます。

看護業務(記録や申し送り、患者対応)である限り、たとえ事前の許可がなくても、「黙示の指示」による労働時間(残業)として認められる可能性が極めて高いです。

2. 仕事が遅いという理由で残業できるの?

判断基準は「それが業務命令と認められるか」です。

認められにくいケース

  • 時間内に終わる仕事をゆっくり時間をかけておこなっている、自己啓発のための勉強などの場合
  • 業務と関係のない私語、スマホいじり、単に更衣室でくつろいでいた場合
  • 上司が「今日の業務はここまでで良い。残りは明日やるか、他の人に引き継いで直ちに帰りなさい」と具体的かつ強力に禁止命令を出していた場合

この場合、残業代が支払われない可能性があります。

認められるべきケース

一方、「仕事が遅い」と感じている原因が、明らかに業務量が多すぎる(他の人もギリギリか残業している)ことや、新しく覚えることが多い(教育体制)にある場合…

それは個人の問題ではなく、業務配分の問題です。

この場合は、残業として申告し、認められるべきです。

「労働時間の問題」と「能力・効率の問題」の違い

労働基準法でいう「労働時間」とは、「病院(使用者)の指揮命令下に置かれている時間」を指します。

そこには「どれだけ速く効率的に働くか」という基準は含まれていません。

  • 労働時間の問題(残業代)
    • 「実際に働いた時間」に対して賃金を支払う義務。
  • 能力・効率の問題(人事評価)
    • 「仕事が遅い」のは、その人の習熟度や能力の問題であり、それは研修や指導、あるいは賞与(ボーナス)や昇給の「査定」で評価すべき問題です。

3. 残業申請ルールと残業代の境界

この問題の「境界線」は、病院の内部ルール(就業規則や申請フロー)ではなく、「その時間が、客観的にみて病院の指揮命令下にあったかどうか」の一点です。

4.社労士としてのアドバイス

もし「許可がない」「仕事が遅い」といった理由で残業代が支払われていない場合、看護師の皆さんは以下のように対応することが重要です。

  • 「労働時間」と「人事評価」を混同しない
    「仕事が遅い」と言われても、「時間がかかってしまったのは事実ですが、その時間は業務にあたっていました」と冷静に主張することが大切です。
  • 「残業申請」は必ず行う
    「どうせ認めてくれない」と思っても、申請(または報告)は必ず行ってください。「黙示の指示」を証明する上で、「病院側が残業の事実を認識していた」という証拠作りに役立ちます。
  • 客観的な記録を残す
    タイムカードの打刻はもちろん、電子カルテのログイン/ログアウト時間、業務日誌、ナースコール対応記録など、「その時間に働いていた」ことを示す客観的な記録が重要です。

結論:どうすべきか?

どちらの理由であれ、残業が必要だと感じたら、必ず師長さんや主任さんに相談・申告してください。

看護師
看護師

「(理由)のため、時間内に業務が終わりそうにありません。申し訳ありませんが、あと30分ほど残業してもよろしいでしょうか?」

看護師
看護師

「いつもこの業務が時間内に終わらず、ご迷惑をおかけしています。どうすれば効率よく進められるか、アドバイスをいただけますか?」

このように「相談」することで、残業の必要性を認めてもらう(=業務命令にしてもらう)こと、そして「仕事が遅い」という悩みを個人で抱え込まず、組織の問題として共有することが、ご自身を守るために最も重要です。



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