


1. 結論:有給休暇は「引き継がれます」
まずタイトルの核心である「有給休暇は消滅?」という疑問ですが、結論から申し上げますと引き継がれることになるので安心してください。
「合併」とは、法律上「包括承継」と呼ばれ、合併前の病院(消滅する会社)が持っていた権利や義務のすべてを、合併後の新しい病院(存続する会社)が丸ごと引き継ぐことを意味します。
これには当然「職員との労働契約」も含まれます。
したがって、職員の立場から見れば、雇用主(病院)の名前が変わるだけで、労働契約の内容はそのまま継続されます。
引き継がれるもの(例)
・有給休暇の残日数
・有給休暇の付与日数を計算するための「勤続年数」
・給与、役職、労働時間などの基本的な労働条件
合併によって勤続年数がリセットされ、有給休暇が0日に戻るということはありませんのでご安心ください。
2. 産休・長期休暇中の扱い
次に、合併のタイミングで休暇を取得していた場合の扱いです。ここには注意点があります。
(1) 産休・育休・労災休業の場合
これらの法律に基づく休暇は、権利そのものが新しい病院に引き継がれます。
加えて、有給休暇の付与要件である「出勤率8割以上」の計算において、これらの休暇期間は「出勤したものとして扱う」か、または「全労働日(分母)から除外する」と定められています。
どちらにせよ、産休や育休を取ったことが理由で出勤率が下がり、次の有給がもらえなくなる(0日になる)という不利益は発生しないように法律で保護されています。
(2) 私傷病による長期休暇(病欠)の場合
ここが最大の注意点です。 「長期休暇」が、産休などではなく、ご自身の病気やケガによる「私傷病休職(病欠)」だった場合、扱いは異なります。
- 勤続年数: 休職期間中も「在籍」はしているため、勤続年数としてはカウントされ続けます。これは合併後も引き継がれます。
- 出勤率: 産休などと違い、私傷病による休みは、法律上「出勤扱い」や「除外日」とはなりません。原則として「欠勤」として扱われます(※就業規則に特別な定めがあれば別です)。
もし1年間のほとんどを私傷病で休んでいた場合、その期間の出勤率は8割を大きく下回ります。
その結果、「勤続年数」の要件は満たしていても、「出勤率8割以上」の要件を満たせないため、次の基準日に付与される有給休暇は0日になってしまう可能性が高いです。
これは、合併があってもなくても同じルールです。合併によって勤続年数は引き継がれますが、出勤率が足りなかったという事実もそのまま引き継がれることになります。
3. 退職後の継続雇用の扱い(勤続年数の通算)
最後に「継続雇用」についてです。これは主に「定年退職後の嘱託再雇用」などを指しています。
形式上は「一度退職して、再雇用される」という形をとっていても、
- 定年退職後、1日の空白もなく嘱託として再雇用された
- 実質的に見て、雇用関係が継続していると判断される
このような場合は、有給休暇の付与日数を計算するうえでの「勤続年数」は、退職前と退職後で通算しなければならない、というのが法律の解釈(通達)です。
このルールも、当然ながら合併によって引き継がれます。 (例:合併前の病院で10年正職員、その後2年嘱託だった人は、合併後の病院でも「勤続12年」を基礎として有給休暇が付与されます。)
まとめ
- 病院合併では、労働契約は丸ごと引き継がれるため、有給休暇の残日数も勤続年数も通算されます。
- 産休・育休は、出勤率の計算上も保護されており、休暇取得によって次の有給が0日になることはありません。
- 私傷病による長期休暇は「欠勤」扱いとなるため、出勤率が8割未満となり、次の有給が0日付与となる可能性があります。
- 定年後の継続雇用なども、実態として勤務が続いていれば勤続年数は通算されます。
「病院の名前や経営体制が変わっても、法律は『あなたが現場で積み上げてきた時間』をなかったことにはしません。
勤続年数も有給休暇も、長年の貢献に対する『正当な権利』として、新しい病院へそのまま引き継がれます。
大きな変化の中で不安を感じることもあるかと思いますが、法律は働く皆さんの味方です。
どうぞ安心して新しい体制でのスタートを切ってくださいね。














